良いお知らせと悪いお知らせがあります。
まずは悪いお知らせですが、あなたの脳はすでにある条件下で吃音が発動するようにプログラミングされています。
吃音は脳の可塑性(脳の神経回路が発火するパターン)と言われています。
つまり、ある状況下で吃音が出る脳回路のパターンが作動します。
電話、会話、朝礼、プレゼン、面接といった状況や、
名前、挨拶の言葉、特定の音「あ行、さ行など」で、
吃音が発動するように癖づけられています。
良いお知らせは、このプログラミングは書き換えることができるということです。
脳の可塑性という、脳のプログラムを書き換えるための法則が、今から話す「MIRRORの法則」です。
MIRRORの法則は、脳の神経可塑性にエラーがある場合、正常な状態に回復するまでに必要なプロセスの頭文字を取り、モスコヴィッツ博士によって名付けられました。
MIRRORの法則とは、
- 動機 (Motivation)
- 意図(Intention)
- 徹底性(Relentlessness)
- 信頼(Reliability)
- 好機(Opportunity)
上記の5つがそろって
→回復(Restoration)へと向かう。
というプロセスです。
吃音になる脳回路の配線(可塑性)を変えるには、このMIRRORの法則をしっかりと腹に落とすことが必須だと実感しています。
動機 (Motivation)
この「動機」とは吃音改善を望む側の態度です。
吃音改善に挫折する人の多くは(特に、初めて取り組む人)非常に受け身です。
モスコヴィッツ博士の言葉を借りれば
「彼らは、自分の役割は薬を飲んで、注射を打ってもうくらいにしか考えていない」
ということです。
吃音を短期間で取り除く、または簡単な方法で治す、魔法のようなものを期待しているのです。
ですが、脳の可塑性を変えるアプローチは本人が積極的に、能動的に関わって行かなければなりません。
特に、
「少しでも良くなったと思っても、すぐに元に戻ってしまう最初の1ヶ月間〜2ヶ月は動機の維持が難しい」と言われています。
この「揺り戻し」は脳の安定を保つ働き(ホメオスタシス)によって必ず起こるものです。
逆に言えば、しっかりとした正常な可塑性を構築出来れば、上手く話せる状態が安定してくるので、長期的に見ればこの機能はプラスに働きます。
ですので、初期の時点での「揺り戻し」は当たり前のことだとしっかり自覚しましょう。
その上で、積極的に試行錯誤しながら自分にとってベストな「吃音が出ない話し方」を構築していきましょう。
意図(Intention)
ここで言う意図とは、「思考の焦点をどこに当てるか?」という意味になります。
実は、吃音を取り組む祭の考え方で改善できる出来ないかある程度決まってしまいます。
これは多くの吃音者とやり取りをさせて頂いて非常に実感している部分です。
最初のメールのやり取りで、「ああ、この人はまずいな…」とすぐにわかるポイントです。
そのまずいポイントとは、
「言葉が出ない」その時その時の結果をジャッジしてしまうということです。
「吃音を発生させない」ということをすぐに得られる報酬だと考えていると、逆にその目標から遠ざかります。
可塑性の性質から言って、ゆっくりとしか変化できません。
必要なのは「変えようとするアクションを継続すること」です。
結果にフォーカスするのではなく、吃音改善に対する行動にフォーカスすることが大切です。
自分を観察しながら今とは違う行動を取ることで、新しい神経回路が形成され、 現在の回路が徐々に弱くなります。
例えば、
英会話の勉強を始めたばかりの人が、
「今日は言葉がすっと出た?出なかった?」
ということに焦点を置いても意味はありませんよね。
習得は長期的なもので、積み重ねの結果です。
そんかことを気にするのは時間の無駄です。
よく使う英文のフレーズを覚えることに焦点を常に当てている人のほうが、半年後、上手く話せるようになっているのは明白でしょう。
吃音改善も同じく、その日その日の結果にフォーカスする人は、悪かった時に過度に落ち込んみます。そしてそれが、吃音改善の足を引っ張るのです。
ちなみにストレスの度合いと可塑性の変化は関連性があります。
ストレスが多いほど、可塑性は変化をしないという脳の性質があります。
「危険な状況では、今まで生き延びた行動を繰り返す」
という原始時代からの本能です。つまり、今までと同じパターンから脱出することは出来ません。
ですので、普段からリラックスする習慣、リラックスしやすい脳の回路を作っていく必要があります。
ですのでしかめっ面ではなく、自分の成長を楽しみながら吃音改善に取り組むという行動にフォーカスすれば、
積み重ねの結果、嫌でも変化していきます。
徹底性(Relentlessness)
可塑性の研究によると、神経回路のルートを変えるには「強い集中力」が必要だと言われていす。
なので、会話や、1人の時の吃音改善のトレーニングも、
適当にやっていては可塑性は変化しないということです。
意識に上げることに集中することで新しいルートの結びつきが活性化します。
例えば小学校の頃、楽器の練習したことを思い出してください。
鍵盤をある程度弾けるようになるまでは、音符を見ながら指を動かすことに相当な集中力が必要としたはずです。
集中しなくてもスムーズに動かせる、つまり可塑性が構築されるまでは、意識的な練習をするというステップを自然とこなしていたはずです。
吃音を改善させたいなら、話す時は自分の話し方や体の状態などに意識を集中させる必要があります。
ただ、適当に会話をするのではなく、
・呼吸
・話すスピード
・口がちゃんと開いているか
など、会話をする時に徹底的に行うことで新たな神経回路のルートを作ることができます。
「吃音が出た、出ない」は重要ではなく、
「意識に上げることに集中できたかどうか?」
ということが、吃音改善を行う上で集中しているかどうかの物差しになります。
信頼(Reliability)
これは「自分は吃音をコントロールできる」という自分の能力に対する信頼です。
自分の吃音が改善するのか?
教えてもらった方法は本当に効果があるのか?
疑心暗鬼なまま長期的な改善に望むのは難しいです。
吃音改善に失敗する人の1番の理由は、単純に、「途中でやめる」というシンプルな理由です。
ほんとうにコレです。
「面倒なので途中でやめる」
特に、少し改善してきたと思ってたけど、また悪化したという時に挫折しやすくなります。(!必ず起こる「揺り戻し」という問題なのに)
前にも言いましたが、脳は自動的に安定させる機能が働きます。
吃音者は脳が悪いのではりません。
脳には今の状態を安定させるという機能があります。動物が生き延びるための最も原始的な機能です。
むしろ脳が正常に作動している証拠です。
ただ、脳には学習という機能も備わっています。
学習は、失敗を繰り返しながら身につきます。
ですので、吃音が出た時も毎回落ち込んだりするのはナンセンスです。
新しい可塑性がしっかりと出来上がるまでは、
脳は元に戻ろうとする機能、つまり失敗するように出来ているのですから。
赤ん坊が歩き始める時、転んだ時に毎回落ち込んでたら、いつまでたっても歩くことはできないでしょう。
歩けると思っていれば、10ヶ月で歩けるようになるか、1年で歩けるようになるか人によって違いますが、歩けるようになります。
吃音は100%治るとは断言できないのが辛いところですが、
吃音改善に失敗する人の99%はこのMIRRORの法則に反しているというふうに感じます。
好機(Opportunity)
ここで言う「好機」とは、
吃音が出た時それをどう捉えるか?という意思の持ち方です。
吃音を変えることが出来る人は、吃音が出た時は問題を認識し神経回路を変えるチャンスだと常に忘れないで欲しいです。
吃音を変えることが難しい人は、吃音が出る度に、落ち込みます。
そうったマイナスの感情を増加させることで吃音でいることを強化させています。
脳の神経回路は良くも悪くも感情を絡めると強化されます。
吃音が起こる
↓
落ち込む
↓
吃音の強化
という負のループから脱出するには、吃音が出たこときっかけに、自分のことを認識し変えていくチャンスとしていかなければなりません。
実際に、吃音の可塑性を変えるには「失敗した自分の状態」を認識出来なければ、無意識の処理となります。
次回も同じ吃音になるという反応のルートを通るだけです。
ですが、認識ができればそのレールから脱輪させ違う道筋を描いていくことが可能になります。
吃音者にとって吃音が起こっている時それをしっかり認識するという機会が与えられます。
それを無視したり、落ち込んだりしているといつまでも吃音が改善しません。
吃音が出た時が神経回路を変えるチャンスだということを常に忘れないで欲しいです。
これら5つを経て、ようやく
回復(Restoration)
という状態に変わります。
動機 (Motivation)
意図(Intention)
徹底性(Relentlessness)
信頼(Reliability)
好機(Opportunity)
これら5つの柱が可塑性の変化に必要となります。
これらを経ることで、回復、つまり一時的なものではなく
ちゃんとスムーズに話せる状態に回復していきます。
緊張した時は普通の人だって言葉に詰まったりどもったりすることはよくあります。
回復した状態でもたまに言葉に詰まるかもしれません。
ですが、吃音改善を乗り越えれたなら落ち着いてリカバリーすることは容易にできるようになっているはずです。
そしてその頃には吃音に対する不安は無くなっていると思います。
MIRRORの法則は吃音の可塑性を変えるのに必須のフレームです。
ぜひ、自分の吃音改善に対する認識と照らし合わせて欲しいと思います。
MIRRORの法則が理解でき、実践できれば吃音だけでなく、いろんな成長が出来ると思います。
可塑性を変えるスキルは今の自分でなく、新しい自分に変えるスキルそのものです。
この知識は、今の自分に満足している方は必要のない知識かもしれませんが、私は、常に今よりも成長したいという思いが強い人間です。
「3年前と比べて何も変わってない」とか思うとすごく罪悪感に駆られます。
可塑性の性質上、焦っても変わらないので3年後に後悔しないように、変えたいことの軸を決め、1%ずつ成長して行きたいと思います。
それでは、メールボックスを開き、3話目の動画をご覧ください…
メールの件名:吃音改善の順序