難発性吃音者の脳
「自分の名前や、会社名」など最初の言葉がつっかえて喉から出てこない。

これは、難発性吃音の典型的なパターンかつ、一番やっかいな現象の一つだと思います。

自分の名前は他の言葉に言い換えもできない、絶対に言わなければいけない言葉です。(言い換え自体、吃音にとっては良くありませんが…)

言いたい言葉が「出てこない」というもどかしさは、吃音者でないと理解出来ない悩みだと思います。

会社で働く時私自身も、自分の名前や会社名が上手く言えないことが、一番の悩みでした。

電話を取っても会社名が言えず、無言になってしまい、受け答えが出来なくなるというプレッシャー…

(参考:吃音症の方の電話対応

なぜ、一人の時では名前会社名などの言葉が上手く出せるのに、実際の会話では、滑らかに出てこないのか?

まずは、その原因となっているところから理解していった結果、
ようやく私も、最初の第一声をつっかえることなく出せるようになってきました。

もし、同じように、「名前、会社名などが上手く言えない」
そういった難発性の吃音の悩みを持っている人に熟読して頂きたい内容です。

 

 

「自分の名前がつっかえてしまい、言えない」それは脳のニューロンが原因がある

吃音治療、特に難発性の吃音を理解する上で、必ず知っておかなければいけない知識として、まずは記憶の仕組みについてお話しいたします。

はじめに、脳にはニューロンという神経細胞がります。それらを繋ぐケーブルがシナプスです。そのシナプスに電気信号が流れる。これが脳の働きです。

この脳の構造を例えるなら、「ニューロンが街」そして「シナプスが道路」となります。また、電気信号は「それらを行きかう車」ということになります。

記憶というのは、その交通ルートを通ったという「記録」のことを言います。

 

吃音と「短期記憶と長期記憶」の関係性

シナプスの経路の記憶が一時的で今後、記憶に残らないものは短期記憶と呼ばれています。
(厳密に言うと記憶には残っていますが、思い出せない)

「例えば、08932という数字を覚えてください」と言ったら、とりあえず頭の中でその数字を繰り返し復唱し覚えることは「一時的」に記憶することはできるでしょう。

(参考:短期記憶はどもりを治すことにつながるワーキングメモリと関係しています。

でも、1週間後聞かれたら、すっかり忘れていると思います。これが短期記憶です。シナプスの経路が一時的に構築されたが、維持はしていない状態とうことですね。

次はそれとは逆の長期記憶というものがあります。これは、シナプスの経路が維持される状態です。

この状態を「可塑性」と言います。この「可塑性」というキーワードは難発性吃音を考える上で重要なキーワードになってきます。

 

同じ状況で名前がつっかえる…難発性吃音は回路ができている

可塑性を例えるなら、これは私の話ですが、先日、急いでバックをした時に道路標識に車の側面をぶつけてしまい、ドアが少し凹んでしまいました。

凹みが戻ることはなく維持し続けます。これが可塑性と似ています。

吃音治療にとって大事なことなので繰り返しますが、「可塑性」とは、脳の変化が維持される性質を言います。

長期記憶は凹んだドアのように、脳のシナプスの回路が維持されます。

雪のわだちと吃音者の脳の関係

もう一つの例としては、上で例えたように、シナプスが道路として例えるなら、雪のわだちを想像して下さい。

雪が降り積もった新雪の上はまだ、タイヤの跡がついていません。

ですが、最初の車が通るとタイヤの跡が出来ます。

一度、タイヤが通り、わだちが出来ると、その上をなぞるように何台もの車が、あたかも線路を引かれたように、同じ道筋を通ります。

脳も同じで一度、深い回路が出来上がると、同じルートを自然と通るようになるのです。

 

言葉の詰まりに対する恐怖への回路が強化される

有名なネズミの実験の話があります。

1つの音楽を聞かせた後、ネズミに電気ショックを与えるというものです。

同じ音楽を聞かせ、その後ショックをを与える。これを何度か経験させると、音楽を聴くだけで反射的に肉体が電気ショックを与えたと同じようにすくみ固まりまるようになります。

難発性吃音の「自分の名前がいつも言えない」といいう現象も同じ状態だと言えます。

自分の名前がつっかえ、上手く出てこなく、恥ずかしい思いをする。(感情を伴うことで、記憶がいっそう強くなります。)

そして頭の中でその嫌な思い出を何度も思い返すことで、回路にパターンが出来てしまうのです。

これが「同じ状況で言葉がつっかえて名前が言えない」ということを繰り返す原因だと考えられています。

シナプスの性質として「同時に起きるものは結びつく」という特徴があります。

名前を言った時、筋肉が硬直し、喉にある声帯が閉じるとう動作がパターン化されています。その結果、声が出なくなります。(ブロッキングと呼ばれる現象)
脳内でパターン化されているので、「名前=言葉がつっかえる」という反応が自動的に起こるのです。

こいったことが、難発性の吃音が生み出されるシステムと言われています。
(その他諸説ありますが、fMRIによる吃音者の脳をスキャンしたことから解った有力な説です。)

(参考:吃音症の原因は脳の5つ問題

ここで、あなたが聞きたいことは次の質問だと思います。

「いつも名前でつっかえるプロセスはわかった」
「それじゃ一度出来上がった、回路のパターンは変えることが出来るのか?」

 

 

難発性の脳を変えることは可能か?

吃音者がそうであるように「名前を言う度に、言葉がつっかえる」というこの憎っくき、回路のパターンを変化させることは出来るのか?

この質問が、あなたにとって一番肝心なことだと思います。

その答えはもちろんYESです。

人間はよくも悪くも変化する生き物です。変化があるということはシナプスの道筋を変えていることに他なりません。

ただ、何もしないとシナプスの経路は同じ道を通ります。脳非常に省エネなシステムとなっています。
基本的に同じことを繰り返します。

脳の可塑性の回路を変えるには、継続的に意識して変化させていくことが重要です。

人間は変化する生き物と言いましたが、「変化が嫌いな生き物」でもありますので、この「普段、無意識にで起こっている身体の運動パターンを、しっかりと顕在意識に上げ、少しずつ変えていく」ということが必要になってきます。

意識上に上げないと、脳は同じルート(例えそれが辛いルートだとしても)を選ぶのです。

(参考:難発性吃音症の改善法

 

脳の回路を上書きする方法

脳の回路を変える

いつも言えない自分の名前を言えるようにするには、
シナプスの回路を変えなければいけないことはわかった。

さあ、じゃあどうやって「名前が言えない」という回路を変えていけばいいのか?それでは、実践的な話に入っていきたいと思います。

実際に、どんな時、古いシナプスの上から、新しいシナプスの回路が再構築されるのか?

吃音以外の例で実際によくあるケースを見ることで、このプロセスの理解が深まると思います。

まず、代表的なのが「消去」というプロセスです。

吃音の回路を書き換える消去のプロセス

このプロセスは非常にシンプルな概念から成り立っています。

先ほどのネズミの実験で例えるなら、電気ショックを与えず、繰り返しその音楽を流してやればいいということです。

すると、「音楽が流れても電気ショックが流れない」ということを学習しますと、徐々に反応をしなくなっていきます。

吃音者も同じです。「名前が言える」という状況を繰り返せば、筋肉が硬直し言葉が出てこないという反応がなくなります。

こういうと、
「だから、それが出来ないから悩んでいるんだよ!」と怒りの声が聞こえてきそうですが、
ここからが重要なことなので、怒りを鎮めて聞いて下さい。

今までいつも名前が言えなかったりした場合、それをすぐに毎回言えるようにするのは不可能です。

ただ、吃音者がこの消去のプロセスを実践するには、まずは「名前を出せる」という状況を1回でも作り出すということさえできれば、その回路を強化していくことは可能です。

消去のプロセスは「毎回、成功させなければいけない」となると、克服は不可能に思えてきますよね。
でも、10回日中、1回でも名前を出せたなら、消去のプロセスを走らせることを可能だと言ったらどうでしょう?

希望は出てきませんか?10回中、1回なら、名前を上手く言えるようになるかもしれないと。
それぐらいなら改善出来るかもしれないと。

 

なぜ1回の成功でも強化が可能なのか?

なぜ、10回中1回の成功でも消去のプロセスを実行することが可能なのか?
というと、人間はネズミよりはるかに高いある能力を持っているからです。

そうです。「想像力です」

ネズミと人間は想像力を発揮する「前頭全野」の大きさが比べ物にならないくらい発達しています。

また、この前頭全野を活発に動かすことが出来る人ほど、脳の回路の書き換えの能力が高いと言われています。

もちろん、これは生まれ持った能力、環境などもありますが、その影響はほんの少しです。

前頭全野の活動は自分自身で後天的に開発していける能力でもあります。

あなたも、実は、この能力を知らず知らず使っています。

例えば、あなたが吃音で悩んでいるなら、今まで逆のプロセスを行って、マイナスの回路を強化しているとういう経験が1つや2つはあると思います。

ある状況で「言葉が出てこなかった」ということがあると、落ち込み、なんども頭の中で繰り返し、繰り返し失敗したことを思い出しているという経験はないでようか?

これがまさに回路を強化しているプロセスに他なりません。

これによって、1回の大きな恥を書いた経験で、吃音になる人もいます。

基本的に吃音者は自然と想像力を使い、繰り返し想像し、名前がつっかえるという回路を強化しているのです。

 

その能力を吃音の悪化に使うか回復に使うかは、選択次第。

さて、これと同じことを成功した時にも行えばどうなりますか?

そうです。同じように上手く話せた状態の回路が強化されます

1回でも上手くいったら、それを喜びなんども頭の中でよかった記憶として、繰り返してみましょう。
何度も何度も頭の中で繰り返しましょう。

大事なことは喜びの感情を絡めて思い返すということです。
良くも悪くも感情は、回路を強化します。(アドレナリンを伴うと良くも悪くも、回路が強化されます。)

そうすることで、今までとは別の回路のルートが出来上がるのです。

そうなってくると、10回中9回、名前が出てこなかったのが、10回中7回に減ってきたりします。

10回中、1回しか成功しなかったのに3回は出るようになったのです。3倍の成果です。

さらにその変化を喜び、頭の中で上手く話せた時のことを何度も楽しみながら想像してみましょう。

失敗したことよりも成功したことを想像し喜びましょう。

そうすることで、回復のスパイラルが生まれます。

 

マイナスが多くてもプラスの想像を膨らませれる能力が誰もが持っている

でも、私がこう言うと
「でも実際に成功した1回のことよりも、失敗したことの数が多かったら良い想像なんて膨らまないんじゃないですか?人間だれしもそうだと思います」という意見を頂いたことがありました。

確かに、自分自身でプラスの方に焦点を当てることを選択しなかったら、誰しも悪い方に考えてしまう傾向にあるでしょう。
人間の進化の過程では、「危険を避けるとう能力」がとても重要だったからです。
ですので、意図しないと自然と不安や恐怖にフォーカスしてしまうものなのです。

ですが、「焦点を当てる場所は選択できる」という能力は誰も持っています。

例えば、今までにあなたは、宝くじを買ったことがあるでしょうか?

宝くじなんて、一等の当たる確率は1000万分の1といわれています。
その確率は交通事故で450回死ぬと同等の確率だとも言われています。

そんな限りなく0に近い確率なのに、宝くじを買う人は「億万長者になったらどうしよう」とプラスの想像力を発揮しているのです。しかも宝くじで大金が当たったことがないのに、当たったことを想像できるのです。

私の親は毎年、年末になると宝くじを買います。何十年も買い続けています。1度も当たったことないのに。

つまり、失敗する確率が多い少ないという問題ではなく、人間の能力として、想像する焦点を自分で選択する能力を持っているのです。

ですので、一回でも自分の名前を言えたなら、上手くいく回路が1度は脳の中で流れているという事実です。上手く自分の名前が言えるというそのルートは必ず存在しているということです。

そのルートを想像で強化し、実際の場面で言える確率を少しでも日々増やしていくというのが、新しい回路を形成する1つのやり方です。

他にも回路を変える方法はある

可塑性となった古い回路を塗り替える方法は他にもあります。

また、運動を司る「小脳」の部分の回路も変えなければいけません。身体の筋肉反応と言えない言葉が結びついていますので。

今回は、心理的な1部の側面をお話ししましたが、身体的なもの、「体の使い方や、言葉の出し方、話し方」なども意識に上げ、変えていくことが吃音治療にとって重要な要素となっています。

心因性ばかりに重心をおいても吃音の改善は進みません。バランスが大切です。

ただ、一度にいろいろ伝えても混乱すると思いますが、今日話した脳の仕組みを理解しておくことが、あなたの吃音治療に必ず役に立つはずです。吃音改善ではこういった「ロジックを知る」ということが、心理的安定にも繋がります。

(参考:どもりで言葉が出てこない原因は、2つ

名前が言えないと悩んでいる方に、本当に伝えたかったこと

今回このことを伝えたかったのは、悪い回路は変えることはできるということ。

そして、失敗したことを何度も思い出していると回路が強化されより、吃音が悪化するというと。

このことを知らないと自分で自分の首を絞め続ける危険があるので、そのことを理解して頂きたいと思いました。

先ほどの宝くじの話でもありましたように、人は想像を選択する能力があります。

ただ、その選択するための能力に差はあります。柔軟体操みたく最初は股関節が硬く脚もなかなか開かないかもしれません。

ですが、毎日ストレッチを行って行くことでその、稼働領域を広げることは誰でもできます。

それと同じように、想像の選択領域も意識していけば広げていくことが誰でも可能なのです

吃音治療も最初は上手くいかなくて当たり前です。

あなたが「今、上手く話せないとしても、それは今後も上手く話せないということではない」のです。

もちろん、
「同じ想像、同じ選択、同じ行動」をしていては同じように上手く話せないでしょう。
それでは同じシナプスの回路を動かしているだけですから。

すでに強化されているシナプスの回路を変えるというのは、大規模な道路工事です。

今まである道を使ったほうが工事するよりも楽かもしれません。

でも、時間をかけ、新たに望む道路が敷かれた時、もう古い道路は廃れていきます。

このことを本当に理解し、日々実践することが吃音治療の重要な1つのピースとなります。

脱、難発。吃音の反応パターンを変えるプロセス

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吃音克服の道のりは単純ではありません。
正しい方向性と、新しい地図を手に入れ、
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吃音改善のプロセスの全体像を知らずして、
取り組むことは、地図と方位磁石を持たず登山に入るようなものです。

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